チーム選びでいちばん多い迷いは、おそらくこれです。「強いチームに入れるべきか、それとも確実に試合に出られるチームがいいのか」。先に結論を書きます。迷ったら、試合に出られる方です。これは気休めではなく、世界の育成の現場が同じ結論にたどり着いています。
子どもがうまくなるのは、試合の中だから
練習で身につくのは技術です。しかしその技術を「いつ、どこで、どう使うか」という判断は、相手と味方がいる本物の試合の中でしか磨かれません。同じ90分でも、ベンチから見ている90分と、ピッチの上で何百回も判断し続ける90分では、経験の量がまるで違います。育成の世界では、出場時間はそのまま成長の資源と考えられています。どんなに評判のよいチームでも、ベンチに座っている時間は子どもをうまくしてくれません。
10歳の「うまい」は、あてにならない
同じ学年でも、生まれ月と体の成長のペースで、実質1年ちかい差があります。強豪のセレクションは、どうしても「いま大きくて速い子」に偏ります。しかしプロになった選手の中には、子どものころは全国的に無名だった選手がいくらでもいます。あとから伸びる子は必ずいて、その子から試合経験を取り上げてしまうことが、育成でいちばんもったいないことです。いまの評価と将来のうまさは、思っているほどつながっていません。
試合に出ることが、自信とやる気の源になる
試合に出る。活躍したり失敗したりする。「次はああしたい」と練習に目的ができる。また試合で試す。この循環が回っている子は、放っておいても伸びていきます。逆にベンチの時間が長くなると、練習の目的が見えなくなり、サッカーそのものから気持ちが離れていきます。試合に出られないことが理由でやめていく子は、昔からずっと少なくありません。うまいから試合に出るのではなく、試合に出るからうまくなる。順番はこちらです。
世界の育成も同じ結論に向かっている
ノルウェーでは低い年代の全国的な順位付けをしないしくみが作られ、ドイツでは小さい年代の試合が全員が関わり続けられるミニゲーム形式へと変わりつつあります。ベルギーが少人数制の試合を中心に育成を作り直したことは、のちの黄金世代の土台になったと言われています。国によってやり方は違いますが、向かう先は同じです。強い相手に勝つことよりも、一人ひとりが判断してプレーする回数を増やすこと。それが将来のうまさにいちばんつながる、というのが世界の育成の到達点です。
強豪を選ぶなという話ではない
強いチームで試合に出られるなら、それは最高の環境です。問題は「強いけれど出られない」を選んでしまうことです。基準はチームの看板ではなく、「うちの子がそこで試合に出られそうか」。体験のときに「同じ学年は何人くらいいますか」「試合の出場機会はどういう方針ですか」と聞けば、だいたいの見通しが立ちます。いまはリーグ戦のしくみが整い、どのレベルにも毎週の真剣勝負があります。レベルの合う場所で試合に出続けることは、遠回りではなく、いちばん伸びる道です。
- 判断は試合の中でしか磨けない。ベンチの時間は子どもをうまくしない
- 10歳時点の評価は生まれ月と早熟に偏る。あとから伸びる子は必ずいる
- 出場→自信→練習の目的、という循環が伸びる子をつくる
- 基準はチームの看板ではなく「そこで試合に出られそうか」
